リワークプログラムの活用について

うつ病の再発リスク

うつ病については、適切な薬物治療、精神療法、生活上の工夫、リハビリテーションなどにより症状の寛解・回復に至る患者が多い反面、再燃や再発などにより経過が思わしくないケースも存在します。産業保健の現場でも、うつ病で休職されていた従業員が順調に職場復帰できたと思っても、数ヶ月後に症状が再発し、休職に入ってしまったようなケースに遭遇することは少なくないと思います。

厚生労働省の資料によると、うつ病の再発率は60%と報告されており、その後再発を繰り返すとさらに再発率が高くなるとされています。このため、うつ病については再発の防止が非常に大切となります。再発を防ぐために、ご本人は職場復帰をあせらないこと、また、ご家族も休業中の安心できる環境をつくり円滑な職場復帰を支援することが大切ですし、「もう働ける」と感じても、主治医の意見に耳を傾け、普段の様子を見ているご家族のご意見も参考にして、再発しない、ゆとりのある職場復帰を行うことが必要となります。

ただ、丁寧に職場復帰の支援を行なったケースにおいても、やはり一定数の方については、再発を起こすことは避けられません。こうしたうつ病の再発を予防するために、特にうつ病の再発を繰り返すようなケースでは、リワークの活用が治療の選択肢の一つとなるのではないでしょうか。企業での復職支援の一環として、積極的にリワークの利用を推奨し、再発予防に努めている企業も見受けられます。ただ、小規模の事業場では、あまりリワークが認知されていないケースも見られ、有効に活用されていない実態もあるかと思います。

メンタル不調で休職した労働者に対するリワークの役割とは

うつ病などで休職した労働者が復職を目指す場合には,生活リズムが整っていること、就業に必要な基礎体力が回復していること,業務遂行に必要な技能が改善していること,その他、セルフモニタリングや対人交流の技能,ストレス対処技能などの改善などが望まれます。

うつ病に対する一般的な治療として、メンタル専門医への外来通院による精神治療や薬物療法、環境調整などが行われていることは広く知られていますが、これに加えて、一部の医療機関では、専門的な職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)が提供されることがあります。リワークとは、return to workの略語です。気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムで、復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムと呼ばれることもあります。

現在、リワークを提供している機関の種類によて、リワークは3種類に分類できます。一つは医療機関で行われている医療リワークとなります。多職種の医療専門職(医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理職など)による医学的リハビリテーションとして実施されています。健康保険制度や自立支援医療制度を利用でき、費用の一部自己負担があります。他にも、地域障害者職業センターで行われる職リハリワークや、企業内で実施されている職場リワークなどがあります。

医療リワークについて

ここでは、医療リワークについて、もう少し詳しくみていくことにします。医療機関によるリハビリテーション(医療リワーク)の目的は、「単に復職を果たす」ことではなく,「復職後,再発なく就労を継続できること」にあります。うつ病は再発しやすい疾患であり,再発予防は職場復帰に向けたアプローチにおいて、重要課題となります。

施設により参加期間は異なりますが、短いものは数週間から長いものは年単位でプログラムに参加します。医療リワークの対象者は、メンタル不調により休職中で、かつ病状がある程度安定し、安全に通所できる状態の方となります。施設によってはフォローアッププログラムを実施しているケースもあり、この場合は復職してからの参加となります。

プログラム内容ですが、決まった時間に施設へ通うことで会社へ通勤することを想定した訓練や、仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われることが多いようです。また、初期には久しぶりの集団生活になれるための軽スポーツやレクレーションが行われることがあります。休職になった時の働き方や考え方を振り返ることで休職に至った要因を確認するとともに復職した時に同じ状況(休職)にならないための準備もしているようです。

「うつ病治療ガイドライン -精神科作業療法-」 では、作業療法で就労に必要なスキルを評価し,課題遂行やコミュニケーションスキルを練習する復職・就労準備支援を実施することによって,うつ症状の改善と職場適応が促進される可能性があり,作業療法による復職・就労準備支援が奨励されるとされています。

職場の産業保健においても、メンタル不調者の復職支援において再発予防は重要課題の一つです。職場復帰前からリワークを活用して再発の予防に取り組み、また主治医だけでなく、リワークのスタッフと情報を共有しながら、会社が復職支援を行うことは、より質の高い復職支援につながるのではないでしょうか。特にリワークプログラムは再発予防に重点が置かれていることから、職場でメンタル不調の再発を繰り返すような休職者への職場復帰支援にリワークを積極的に組み込むことは、有用な選択肢となると考えています。

一方、医療リワークの問題点としては、リワークを実施している医療機関が限られていること、通院先と主治医の変更が必要になる場合があること、リワークプログラムは、3~6か月間の実施が標準的で比較的長く通う必要があること、医療費に加え、食費や交通費など一定の費用がかかること、などが挙げられます。医療リワークの利点、問題点をしっかり把握した上で、メンタル不調の再発を減らし、スムーズに職場復帰できるよう、復職支援における選択肢の一つとして、医療リワークを有効に活用していきたいところです。

東京都近郊でリワークプログラムが受けられる医療機関の一覧

日本うつ病リワーク協会が作成している、「医療リワークのご案内 〜職場復帰までの流れ・リワークの活用方法〜」のリンクを貼っておきます。ぜひご参照いただければと思います。

東京都近郊でリワークプログラムが受けられる医療機関の一覧

日本うつ病リワーク協会 認定施設

メディカルケア虎ノ門(東京都港区虎ノ門)

NTT東日本関東病院(東京都品川区東五反田)

品川駅前メンタルクリニック(東京都港区港南)

心の風クリニック(千葉県船橋市)

サンピエール病院(群馬県高崎市)

東京都内でリワークプログラムが受けられる医療機関情報(日本うつ病リワーク協会HP)

埼玉県・千葉県・神奈川県でリワークプログラムが受けられる医療機関情報(日本うつ病リワーク協会HP)