離職率の動向について

先日、某企業の人事担当者から「当社の離職率は同業他社の離職率と比べどうなのか?」という質問がありました。即答することができなかったため、後日調べた結果を備忘録として残しています。

離職率に関するデータは、厚生労働省の雇用動向調査結果に示されています。雇用動向調査は毎年実施されており、最新のものは令和3年雇用動向調査結果となります。

この調査結果によると、全体の離職率は13.9%(男性12.8%、女性15.8%)となっています。就業形態別にみると、一般労働者の離職率は11.1%、パートタイム労働者の離職率は21.3%でした。

同調査では、産業別の離職率についても示されています。下記のグラフは、令和3年雇用動向調査結果から引用したものですが、サービス業、特に宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業の離職率の高さが目立つ結果となっていました。IT関連企業などは人の出入りが活発な印象がありますが、情報通信業などではそれほど離職率は高いというわけではないようです。

また性・年齢階級別の離職率を見てみると、男女とも29歳以下では、全体の離職率の平均を上回っており、特に20〜24歳の離職率は男女とも20%台とかなり高くなっています。逆に40〜59歳では、男性では5〜6%、女性でも10%前後と離職率は低く抑えられています。この結果から、会社において離職率を下げるためには、若年層、特に10〜20歳代の離職を抑えることが重要と考えられます。

同調査では、転職した人の前職を辞めた理由についても調査されています。この結果を見ると、個人的な理由、定年・契約期間の終了などを除くと、男女とも、「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」といった理由で離職した人が多くなっているようです。

離職率に関しては、先日興味を引かれる記事が東洋経済『CSR企業総覧』に出ていました。「離職する人が少ない大企業」100社ランキング、従業員1000人以上で離職者が少ない企業は、という記事です。『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2023年版のデータを使い、2021年度の「離職者が少ない会社ランキング」を作成したとのことでした。この記事の中で、上位にランキングされた企業の多くに共通する取り組みを取り上げられていたのが従業員への教育研修の充実でした。技能検定取得のサポートや社内コンテストの実施など従業員の技能を高め、また従業員のモチベーションを引き出す取り組みがされているようです。従業員あたりの教育研修費用も高水準であったとのことでした。またランキング上位の企業では、従業員への教育研修の充実と並行して、残業削減など働き方改善の取り組みや、在宅勤務やサテライトオフィスの活用など働きやすい職場環境の整備などに積極的に取り組まれているようです。

先ほど20歳代の離職を抑えることが重要と書きましたが、いわゆるZ世代がちょうどこの年齢層に当てはまります。Z世代の特徴のひとつに、自己成長やスキル向上を志向し、テレワークやリモートワークなど多様な働き方はもちろん、副業や兼業、パラレルキャリアへの関心が高いことがあるかと思います。離職する人が少ない企業で、職場環境や働き方の改善と平行して、従業員の教育研修が充実しているというのは、この辺りのトレンドをしっかりと掴んだ施策が行われていることが推測されます。